NICU(新生児集中治療室)で過ごす赤ちゃんのために、
お母さんやご家族ができることは、実は限られています。
生まれてすぐにたくさんの管につながれ、保育器の中で一生懸命生きているわが子を見守ることしかできない。
そんな時間は、とても長く、切なく感じます。
私も、妊娠27週目に955gで生まれた長女をNICUで見守る中で、
「何かしてあげたい」という思いをずっと抱えていました。
そんなとき、助産師さんが教えてくれたのが 「手作りの保育器カバーを作ること」。
赤ちゃんに穏やかな環境をつくってあげるだけでなく、
“ママにもできることがある” と感じられる素敵な取り組みでした。
この記事では、
- 保育器カバーって何?
- 保育器カバーの役割
- 私が保育器カバーを作ることになった経緯
について綴っています。
今NICUにいる赤ちゃんを見守っているママ。
何かしてあげたいのに何もできない気がして落ち込んでいるママに読んでもらえるとうれしいです。
NICUの保育器カバーってなに?
NICUでは、ほとんどの赤ちゃんは保育器の中で育ちます。
保育器はお母さんの子宮の役割をしてくれるものです。
赤ちゃんが安心して過ごせるよう、環境をできるだけお母さんのおなかの中に近づけてあげることが大切とされています。
そのひとつが「保育器カバー」です。
保育器カバーの役割(光・音・刺激をやわらげる)
NICU(新生児集中治療室)で過ごす赤ちゃんたちは、
体温調節がまだうまくできず、皮膚もとてもデリケート。
そのため、保育器の中で温度や湿度を管理しながら、
安全に成長できるようにケアされています。
ただ、NICUは医療機器が多く、常にモニターの光やアラーム音が鳴る環境です。
大人にとっては何気ない光や音でも、赤ちゃんにとっては大きな刺激になります。
そこで役立つのが、保育器カバーです。
保育器に専用の布をかけることで、光や音をやわらげ、静かで安心できる空間をつくることができます。
- 保育器の光を遮ることで睡眠リズムを整える
- 外からの刺激を減らして、赤ちゃんのストレスを軽減する
また、保育器カバーをかけると、
遠くからでも「この保育器が自分の子だ」とすぐにわかるという利点もあります。
保育器カバーを手作りしようと思ったきっかけ
保育器カバーを手作りするきっかけになったのは、助産師さんの一言でした。
「何かしてあげたい」気持ちを受け止めてくれた助産師さん
娘のんがNICUに入院した当初、私は「自分にできることはないかな」と毎日考えていました。
保育器の中で一生懸命生きようとしている娘を前にしても、私が直接してあげられることは限られていました。

だっこもできないし、おっぱいもあげられない。
そんなとき、助産師さんが声をかけてくれました。

お母さんの手作りの保育器カバーをかけてあげるのもいいですよ。
その言葉に、少し心が救われた気がしました。
「それなら私にもできるかもしれない」と思ったのです。
ばあばの手作りカバーができるまで
ところが私、裁縫がとても苦手です。
すると、私の母が
「じゃあ私が作るわ!」
とすぐに立候補してくれました。
仕事が早くて器用な母は、その日のうちにかわいいピンク色の保育器カバーを完成させてくれました。
裏地には黒い布を使い、遮光性をしっかり持たせた本格仕様。

NICUに持っていくと、看護師さんたちも「とても素敵ですね」と言ってくれました。
カバーをかけると、娘の保育器がすぐにわかるようになりました。
そして何より、ピンク色の布に包まれた保育器を見て、少しだけ心が温かくなりました。
病院という医療機器に囲まれた無機質な空間の中で、「家族の気持ちがこもった場所」になったように感じることができました。
保育器カバーを作るときの工夫ポイント
保育器カバーの役割は光や音の刺激をやわらげて、赤ちゃんが落ち着いて眠れるようにするためのものです。
ここでは、実際に保育器カバーを作るときに気をつけたいポイントを紹介します。
遮光性を高めるための生地選び(裏地を黒く)
保育器の中は、できるだけ暗く保ちたいもの。
とはいえ、病院の照明が強いことも多く、生地1枚では光を通してしまうこともあります。
そこでおすすめなのが、裏地を黒い布にする方法。
表地はお気に入りの柄を選んで、裏に黒の薄地を重ねると、光をしっかりカットしながら見た目も明るい印象にできます。
素材は、通気性のあるコットンにしました。
あまり厚すぎると保育器の温度管理に影響が出ることもあるそうなので、事前にNICUのスタッフさんと相談しながら決めましょう。
事前にNICUのスタッフさんへの確認を!
病院によって、保育器カバーの形やサイズ、使える素材のルールが違う場合があります。
たとえば「火災予防のためポリエステルNG」「吸湿性のよい素材を」など、細かい決まりがあることも。
手作りのカバーは使用できない病院もあるかもしれません。
事前に、NICUの看護師さんや先生に手作りしてもいいか確認しましょう。
もしOKが出たら、カバーの形を合わせておくと、日々のつけ外しもスムーズになります。
保育器カバーを実際に使ってみて感じたこと
保育器カバーをつけてから、NICUで過ごす毎日が少しだけあたたかく、穏やかに感じられるようになりました。
ここでは、実際に使ってみて感じたことを、いくつか紹介します。
娘の保育器がすぐ見つけられる安心感
NICUにはたくさんの保育器が並んでいます。
最初の頃は「どこに娘がいるんだろう?」と探してしまうこともありました。
保育器カバーをつけるようになってからは、娘の保育器がひと目でわかるように。
毎日通う中で、自分の赤ちゃんの「居場所」がすぐに見つけられることは安心につながります。
小さなことですが、NICUでの生活では、そうした“ちょっとした心のよりどころ”が大きな支えになりました。
やさしい色で癒される
病院の中はどうしても白やグレーが多く、機械の音や光もあって緊張しがち。
そんな中で、淡いピンクやベージュなどのやさしい色のカバーは、気持ちが落ち着きました。
保育器の中の娘のんは裸の状態だったため、保育器カバーが服の代わりをしてくれているような気分になりました。
面会に行ったときに、のんの保育器の中に差し込む光がやわらかく見えるのも、なんだかうれしい気持ちになりました。
赤ちゃんだけでなく、見守るお母さん自身も癒してくれる存在になった気がします。
お母さんにも「できること」があるという気づき
NICUでは、赤ちゃんのケアの多くを医療スタッフにお任せするしかありません。

母親なのに自分には何もしてあげられない
と悲しくなる毎日です。
でも、カバーを作ることは「家族にもできることがある」と気づく大切な過程になりました。
「のんが心地よく過ごせますように」と願いながら私の母が作ってくれた保育器カバー。
私の母にとっても、「孫にしてあげられることがあった!」とうれしい時間だったそうです。
まとめ:保育器カバーは「お母さんの想い」を届けるもの
保育器カバーは、赤ちゃんの安眠や刺激の軽減だけでなく、
お母さんや家族の心にもそっと寄り添ってくれる存在だと感じました。
NICUで過ごす毎日は、どうしても緊張の連続。
けれど、カバーを通して少しでも「おうちの温かさ」や「家族の想い」を届けられるのなら、
それだけで十分な意味があると思います。
これから保育器カバーを作ってみようと思っている方は、
ぜひNICUのスタッフさんにも相談しながらやさしいカバーを選んでみてくださいね。



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